よりよき観光文化の継承にむけて 第4回 “づくり”こそがよりよき観光文化継承の鍵

古賀学松蔭大学観光メディア文化学部教授

2014.10.16

生涯現役の集落づくり

 高齢化集落の今後を考える機会があり、利賀村の中谷信一さんから、私たちは“生涯現役の集落づくり”を目指しているという話を聞いたとき、目から鱗でした。聞けば当たり前のことのようですが、高齢化集落を考えるとき、一番先に出てくるのは、外部の人を入れる、助っ人を求めるなどという、外からの人のことではないでしょうか。不足という視点から、人手や新たな居住などという視点が生まれ、結果、今生活をされている方々が不在となっていることがないでしょうか。

 生涯現役、これこそが集落の、そして一人一人の生活のあり方ではないでしょうか。
 一分一秒の時間の切り口が、文化を創り出しているのだと思います。人に終わりがあるように、人の生活とともに歩み、形づくられた地域文化の色濃く残った集落にも、終わりがあって当たり前だと思います。
 存続という視点からは、地域文化の継承といった言葉は大変薄い言葉となってしまうでしょう。棚田が、美味しい米を作る役割をやめ、景観や形だけの耕作になったとき、すでに棚田が継承してきた美味しい米ができるという文化は途絶えたといえるでしょう。
 あえて言葉を続ければ、棚田が新たな役割を担って再生された、というべきでしょう。全く異なった文化を背負って。その異なった文化の一つが不本意ながら、観光という文化かもしれません。

 “づくり”の持つ意味

 特に調べてはいませんが、昭和の終わりごろでしょうか、観光振興や観光計画という言葉が観光地づくりという言葉に変わりはじめ、現在に至っています。現在は以前ほど使われていないようですが。それは、“づくり”が行われていないからではないでしょうか。

 観光地づくりと言われ始めたのは、地域おこしなどが全盛の時からではないでしょうか。地元住民の方が主体となって、よりよい地域づくりをめざす地域活動のことです。この活動において最も重要なのは、“動く”“動いている”という現在進行形のところです。

 今観光地で元気なところはどこですか、と聞かれることがあります。大変難しい問いです。元気なところの意味には、三つあります。

 一つは、観光客が大勢来てにぎわっているところ、もう一つは、元気に活動をしているところ。三つ目として、その両方があるところ。一つ目は大変目立ち、二つ目は分かりにくく、おそらく当てはまるところは多いのでは。三つ目は一つ目に吸収されます。

 観光地づくりといった場合、その過程が重視されるのではないでしょうか。観光地整備というと、目標が設定され建物ができるように形が決められます。現にその多くは施設や設備で構成されます。観光地づくりは、観光まちづくりや観光地域づくりという言葉になり、現在では、観光地域づくりが主流となっているのではないでしょうか。観光地域づくりは観光まちづくりに対して言われるようになりました。

 しかし、観光まちづくりは、観光地づくりと町づくりの一体化、観光地域づくりは、観光による地域振興といった意味合いが強く、意外と異なった意味を持っています。余談ですが、当方は観光を司る運輸省とまちづくりを司る建設省が合わさり、国土交通省として観光まちづくりが誕生、と思っているのですが真偽のほどはわかりません。

 これらの共通する“づくり”は皆、進行形が強く意識されていることには変わりないと思います。連載第2回で、地域資源の来訪目的資源化のことを書かせていただきましたが、この過程を地域一丸となって推し進めているところこそ、元気な観光地と言えるのではないでしょうか。

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