誰もが暮らしやすいまちをめざして 青いかば旅行社の挑戦(後編)
どうすればできるか考える―中学生とまち歩きツアー
シンポジウム以外にも、今年の10月には、市内のレジャー施設で全社員に向けて車いす利用者の立場から講演した。9月から11月には、市内の小中学校で計5回の福祉授業を行った。「普段どんな暮らしをしているのか」「働くこととは」など、毎回少しずつ違うテーマに対して、パワーポイントの資料を作り、それを見せながらわかりやすく話している。
中でも大きく発展したのが、市内の宇佐美中学校1年生の授業だ。伊東市社会福祉協議会の学校への提案がきっかけで、講演から数週間後、生徒たちが自分たちの校区を浩平さんに案内する「まち歩きツアー」が行われた。生徒たちは現地を回り、見せたいと考えた場所について、段差や坂などを考えながらクラスごとにコースを設定した。当日は浩平さんの車いすを生徒が押して移動し、自分たちも交代で車いす体験をしながら、段差や道幅など危険な個所がないか確認。各所で、事前に調べたその場所の歴史や見どころを説明した。
宇佐美中1年生とまち歩きツアー
生徒が設定したコースには急な坂道もあった。二人は本当に上れるのかという不安も感じていたというが、生徒が5人がかりで浩平さんの車いすを押し、上がりきって神社の巨木を見学することができた。坂を上らなくても巨木の見える場所を教えた生徒もいた。また、急な階段があるので行けないと二人が思っていた寺にも、地元に住む生徒の案内で、細い路地から入って参拝することができた。
この日を振り返って浩平さんは、「普段のツアーでは安全第一で、できないと思っていることを、(生徒たちは)どうやるとできるようになるかを考えています。比波預天神社や、行蓮寺は私たちだけでは行けなかったので、行けたことが大変嬉しかったです」とFacebookページに記している。
生徒たちにとってこの授業は、まさに「総合的な学習」だといえる。自分のまちの歴史や魅力を知り、それを人に説明する。自分のまちが車いすで暮らす人、訪れる人にとってどう見えるのか知り、どうしたら暮らしやすくなるかを考える。高齢者にとっては、外国人にとっては、と考えを広げられる。クラスの仲間と協力することも学べる。そして、相手に喜んでもらうことができた。
この貴重な体験を生み出したのは、青いかば旅行社の日ごろのツアー、そして、生徒に浩平さんの車いすを任せた、二人の覚悟なのだろう。
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