「能登の里山里海」を保全しながら地域再生へ

香坂玲東北大学大学院 環境科学研究科教授

2016.09.16石川県

多様な構成資産

千枚田千枚田

 システムを、構成している要素ごとに登録することは義務づけられていない。しかし、能登地域GIAHS推進協議会によって、能登の世界農業遺産を構成する資産がリスト化されており、システムを表象する「もの」も確認することができる。各資産は農産品、景観、伝統行事など12種類に分類され、253件の資産情報が含まれている。

 市町別の資産情報の総件数は、輪島市が最も多く40件を超えており、次いで穴水町が多い。輪島市については数の上で多いだけではなく、市内にある「千枚田」の風景は、行政の観光パンフレット類でも表紙で使われることが多く、能登の里山里海のなかではシンボルとしてのアイコンになりつつある。2015年のNHKの朝ドラの「まれ」でも舞台となり、揚げ浜式製塩なども注目された。看板、店舗が整備され、都市部住民を含む人々とのオーナー制度を通した交流も実施している。

 具体的な資産の分類別の件数は市町ごとに異なり、輪島市では伝統行事等が3割以上を占めるが、穴水町では農産・海産品の割合が高い。農産・海産品およびその加工品は、地域全体で生産されていることも多く、面的に分布している。それに対して、伝統行事、伝統技術、農業関連工芸等は、ピンポイントで立地を確認することができる。そのように、立地点を把握できる資産の分布を確認すると、必ずしも市街地等の人口集中地区に偏ってはおらず、森林地域も含め、能登地域全体に分布している。特に、市町境界にも分布しており、各資産の保全・活用において、自治体間の連携が求められている。

能登の世界農業遺産の構成資産分布図(Kohsaka et al.(2015b)を基に筆者作成)能登の世界農業遺産の構成資産分布図(Kohsaka et al.(2015b)を基に筆者作成)

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