コンテンツツーリズムの成否の分かれ目2 持続のカギは地域でのコンテンツ創出
継続が実を結んだ南魚沼の『美女旅』
(図2)現地の素人の女性をモデルに起用した『美女旅』パンフレット
南魚沼の『美女旅』(図2)は現地の素人の女性をモデルに起用した観光パンフレットだ。NHK大河ドラマ『天地人』以降の行政や関係者の試行錯誤が結実した事例といえよう。当初は四季折々の南魚沼の観光名所を女性モデルが案内するといった形だったが、現地のスイーツを紹介したり、自動車学校とコラボレーションしたりとバリエーションも増えてきた時点で、岩手県からのオファーにより『美女旅×いわて』を発行、それに続き、上越新幹線活性化同盟会『美女旅×上越新幹線』、JA魚沼みなみ、南魚沼市などで組織する南魚沼地域農業振興協議会『美女旅×コシヒカリ』と、さまざまに展開している。
人口約6万人の南魚沼市役所の事業としては驚くほどの対外認知を得ている。この企画もカメラマン、デザイナー等は現地スタッフである。こちらも市役所の事業と位置づけた点に特徴があり、民間企業ではなく公的な市役所が発行することが差別化につながったのだろう。また地域の一定の自信にもなっている。もちろん事業展開の過程でのコンフリクトは当然生じるが、それでも継続が重要だということを認識させてもくれる成功事例だ。
『美女旅』パンフレット(美女旅プロジェクト http://bijotabi.jp/)
産業創出で持続可能なコンテンツツーリズムへ
冒頭に述べたように、これからは地域でのコンテンツ創出が次の新たな文脈になるに違いない。デジタル化やインターネットの普及は地域のハンディキャップを希釈させてきているとみることもできよう。そして試行錯誤の過程で、地域に経験値が蓄積されてくる。
コンテンツツーリズムの新たな評価基準がこのコンテンツ創出にある。観光創出以外の、産業創出という側面を今後は注目していかなければならない。これが地域のコンテンツツーリズムの持続可能性に繋がっていく一つの鍵になっていくだろう。
コンテンツツーリズムの成否の分かれ目1 “ブーム”になったコンテンツツーリズム
■著者プロフィール
法政大学大学院政策創造研究科教授、コンテンツツーリズム学会会長、文化経済学会理事。著書に『物語を旅するひとびと』(2010、彩流社)、『路地裏が文化を生む!』(2012、青弓社)など多数。
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