コンテンツツーリズムの成否の分かれ目2 持続のカギは地域でのコンテンツ創出
地域でのコンテンツ創出の兆し
前回のコラムでは、アニメを中心とした観光行動が地域活性化に結びつき、さまざまな地域でコンテンツツーリズムの施策がとられていることに触れた。
コンテンツツーリズムをもう一方の視点からみると、コンテンツによる観光創出と並行して、地域でのコンテンツ創出も射程に入れていく必要があるに違いない。つまりアナログの時代よりもデジタル化以降では、コンテンツ制作のコストが軽減されたことが可能性を広げたともいえる。
またインターネットの活用によるプロモーション方法の変化の影響も少なくはない。従来、コンテンツは東京を中心にして制作されてきたが、地域のハンディキャップが少なくなったことを背景に、当該地域を意識したオーダーメイドのコンテンツ制作も現実的になってきた。
例えば、アニメの文脈ではさまざまな地域で作品を活用した観光創出の試みが行われているが、アニメ制作会社が地方都市に依拠する事例は多くはない。
『けいおん!』『氷菓』などで知られる京都アニメーションが宇治にあったり、『花咲くいろは』などで知られるP.A.WORKSが南砺にあったり、『秘密結社鷹の爪』の蛙男商会は島根県で活動したりもするが、大半のアニメ作品は東京を中心としたエリアで制作されている。地域でのコンテンツ創出の動きは観光創出をはじめとして、雇用の創出にもつながっていくという意味では、間接的ではあるが、コンテンツツーリズムの成功の指標になるに違いない。
つまり、単に観光領域に留まらない実態を伴った動きにも注目していく必要があるということだ。これは、持続可能性という観点からは極めて重要な点である。実際、コンテンツ産業は東京への一極集中状態で生成されてきたので、地域での産業振興は地域の若年労働者の流出を減少させる可能性もある。札幌のクリプトン・フューチャー・メディアの『初音ミク』や福岡のレベル・ファイブの『妖怪ウォッチ』の成功も記憶に新しい。ようやく地域でのコンテンツ振興の兆しが生じてきたということでもあろう。
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