若者の旅行離れ
海外旅行離れ 言語、同行者、お金、時間……
2000年代後半から“若者の海外旅行離れ”が指摘されてきた。若者全体の海外旅行に対する意欲が1990年代半ば頃と比べると減退し、数値上でも出国率の低下に現れている。
若者が海外旅行をしない理由を「個人内阻害要因」「対人的阻害要因」「構造的阻害要因」に分類する考え方がある。
1つめの「個人内阻害要因」には、言語や現地滞在中の不安、計画や準備への負担感が含まれる。2つめの「対人的阻害要因」は同行者がいないことを意味する。3つめの「構造的阻害要因」はお金や時間の不足を指す。
これまでの調査の結果、1)海外旅行に拒否感がある人は3つの阻害要因を高く知覚していること、2)海外旅行未経験だが行く意欲を示す人は「個人内阻害要因」のうち言語への不安を強く抱いていることが明らかになった。
一方、積極的に海外旅行をしている人でも「構造的阻害要因」が存在し、学生にとってはお金、社会人にとっては時間の不足が実施のネックとなっていることもわかった。
国内旅行離れ 地域・体験の魅力の認識不足……
では、国内旅行はどうだろうか。各調査における若者の国内旅行参加率や参加回数の数値をみると、1990年代半ばをピークに2000年代後半まで減少傾向が示されており、国内旅行においても若者の「旅行離れ」現象を観察することができよう。
国内旅行をしない理由として、確かに海外旅行と同様にお金や時間、同行者の欠如といった要因が共通して存在する。また、旅行に全く興味を示さない人もいる。しかし、国内旅行には言葉や治安、衛生面など現地滞在中の不安は極めて少ないはずである。にもかかわらず、国内旅行に行かない若者が存在しているのが実情となっている。
おそらく、国内旅行不参加者の中には、旅行は嫌いではないが“なんとなく”旅行に行かないまま時間が経過してしまった人もいると考えられる。この状況をどのように説明できるのだろうか。
第1に、国内旅行で訪れるべき場所を知らない、または現地でどのような体験・経験をできるのかを認識していない可能性がある。第2に、投入したお金や時間のコストに見合う体験・経験を国内旅行で実現できると評価していないことも想定される。第3に、国内旅行の日程の慌ただしさや混雑に対する嫌悪感があることも無視できない。
国内では着地型観光の取り組みが各地で進められている。その中で「若者の旅行離れ」に対してできることは、メディアの力を借りて地域の魅力を伝えていくこと、来訪した若者に良い体験・経験をして帰ってもらいそれを仲間に広めてもらうことになるだろう。特効薬はないが、地道で着実な取り組みが今こそ必要と考える。
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