リゾートにおけるスポーツツーリスト獲得戦略
新たな局面を迎えた日本のリゾート
1987年に総合保養地域整備法(通称:リゾート法)が施行され、全国42構想の大型リゾート開発が着手されることとなり滞在型のスポーツ、レクリエーション、教養文化活動の受け皿になることが期待された。ところが、バブル経済崩壊の煽りを受けて、リゾート開発の中止や破綻が相次いだ。
国土交通省がリゾート構想の総点検による見直しをする中、経営努力によるリゾートの再生が軌道に乗りつつある。
昨今、全国各地のリゾートが再生によって生まれ変わり、日本のリゾートは顧客獲得の新たな局面を迎えている。これからリゾートがターゲットとして強化すべき顧客は、外国人旅行者とアクティブシニアであろう。
観光庁はスポーツツーリズム推進基本方針を策定し、訪日外国人旅行者をスポーツツーリストとして誘致することを掲げている。
一方、団塊の世代が定年退職を迎えて時間的にも金銭的にも余裕ができ、リタイア後のライフスタイルを楽しんでいる。もともと活動的でチャレンジ精神が旺盛な世代であることからアクティブシニアとも呼ばれ、スポーツツーリストとして消費を牽引することが期待されている。
感動体験と高品質サービスを提供するには
スポーツツーリストの行動を理解するためのレクリエーション・スペシャリゼーションという理論では、新たなスポーツに挑んでみたい「体験志向」、仲間とのコミュニケーションを楽しみたい「社交志向」、競技スポーツに参加したい「競技志向」、スポーツから興奮を求めたい「快楽志向」といったタイプの参加者がみられ、それぞれスポーツに対する態度や価値観が異なることが説明されている。
よって、スポーツツーリストを魅了するには、スペシャリゼーションのタイプに応じたスポーツサービスを提供しなければならない。
スキーリゾートの場合、体験志向の外国人旅行者には初心者向けのゲレンデでスキーの個人レッスンを行い、社交志向のアクティブシニアにはガイド付きの団体スキーツアーを企画し、競技志向のアクティブシニアにはスキー大会の出場機会を案内し、快楽志向の外国人旅行者にはパウダースノーが満喫できるアドベンチャーツアーを提案する、というようなスポーツツーリストにとって価値の高いリゾート経験を用意すべきである。
スポーツツーリストに対する「おもてなし」として、感動を与える経験とクォリティ(品質)の高いサービスを実現することで、リゾートの魅力が大きく高まりデスティネーション(旅行目的地)のイメージ向上にもつながる。
リゾートにおけるスポーツツーリスト獲得戦略は、いかに顧客のニーズに密着した感動経験と高品質サービスを提供するかにかかっている。
ここで紹介したレクリエーション・スペシャリゼーション、サービス・クォリティ、デスティネーション・イメージといった学術的な視点から調査研究を実施することによってスポーツツーリスト行動を分析し、その成果をリゾートのサービスに反映していくことが求められよう。
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