ユニバーサルツーリズムに対応した観光地づくりシンポジウム
ユニバーサルツーリズムのマーケット
アンカーマン中村元氏による基調講演
本シンポジウムのポイントは、トークセッションのテーマにもある「民間」の力だ。
中村氏は基調講演の中で、ユニバーサルツーリズムがいかに大きいマーケットとなっているかを述べた。中村氏は2002年1月に伊勢志摩バリアフリーツアーセンターを設立。中村氏によれば、当時副館長を務めていた三重県鳥羽市の鳥羽水族館で調べたところ、障害者手帳を提示して入館した人は全体の0.5%であったそうだ。しかし、その人は一人ではなく平均して4名のグループや家族で来館していた。
さらに、後期高齢者を中心とする足腰が弱ってきた高齢者は、バリアフリー観光の充実しているところなら自分も旅行しやすいのではないかと考える。それによって、彼らと仲のいい65歳以上の高齢者、つまりもっとも時間的、経済的にゆとりのある世代も誘致することができるという。
日本バリアフリー観光推進機構理事長の中村元氏
中村氏:「バリアフリー観光を嫌がる事業者が多いのは、ユニバーサルデザイン(UD)はすべての人のためにとか、絶対やらなくちゃいけないと言われるから。日本のUDは平等の原則を持つ行政による日本独特のUDですが、事業者まで同じようにしなくていいのです。ユニバーサルツーリズムで大事なのは『ユニバーサル』ではなくて『ツーリズム』。いかにたくさんの人に旅行を楽しんでもらえるかということです。そのために、商売で使える、売れるものをつくるように考えればいいのです」
さらに、その際にポイントとなる「パーソナルバリアフリー基準」についても紹介があった。この基準では、その場所がバリアフリーかそうではないか、一律に決めることはしない。伊勢志摩バリアフリーツアーセンターでは、観光地や宿について、その場所にどんな「バリア」があるかを詳細に調査し、相談に来た人や介助者などの状況に合わせて紹介している。その際にも大事なのは「ツーリズム」、つまり「どこに行きたいのか」「何がしたいのか」という思いだと中村氏は述べた。
中村氏:「すべてがUD化されたまちではなく、障がいを持っていても特別視せず一般のお客さんとして受け入れてくれるまちが、人にやさしいまちです。そういうまちは、確実に商店街のマーケットが広がります。日本は超高齢社会への対応に四苦八苦していますが、将来を見据えて今の産業も広げることができる唯一の方法が、バリアフリー観光です」
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