ボルダリングで金華山の復旧・復興に取り組むNPO法人FIRST ASCENT JAPAN.
宮城県石巻市の牡鹿半島沖に浮かぶ金華山は、周囲が約26kmの島で、豊かな原生林に覆われ、野生のシカやサルが生息している。古くから信仰を集める黄金山神社が鎮座し、東北有数の霊場として知られている。
しかし、2011年の東日本大震災後は、観光客が激減。被災した金華山を岩登りのボルダリングで復興させようと、仙台のクライマーが中心となり設立したのが「NPO法人FIRST ASCENT JAPAN.(ファースト・アッセント・ジャパン)」だ。その代表理事を務めるむらかみみちこさんは、金華山震災復興支援活動を「宝島プロジェクト」と銘打ち、ボルダリングエリアの開拓、登山道の整備、地元企業との商品開発などに力を入れている。
むらかみみちこさんに設立経緯や、活動内容、課題などをうかがった。
むらかみみちこさん(中央) 写真提供: NPO法人FIRST ASCENT JAPAN.
ボルダリングエリアの開拓で震災復興を
――NPO法人FIRST ASCENT JAPAN.の設立経緯を教えてください。
むらかみ:1994年から国内外でアルパインクライミングを楽しんでいました。山の崖を何時間も登り続け、足場が悪いところでクライミングをするので、出産後は行けなくなってしまいました。そこで子ども連れでも楽しめる岩場を探したところ、クライマー仲間が金華山を勧めてくれて、2004年から金華山でボルダリングを始めました。
金華山へは、私が住んでいる仙台市から鮎川港まで車で約2時間半、定期船に乗り約20分で行くことができます。金華山は島そのものが山になっているので、登山を楽しんだり、海岸線では花崗岩の白い岩と碧い海の景色を眺めながらボルダリングができるので、初めて行った時から、大好きな場所となりました。
そんな中、2011年に東日本大震災が発生しました。私は震災の復興を手助けしたいと、高台移転の聞き取り調査など、さまざまなアルバイトをしていましたが、いつまでも復興が進まず、憤りを感じていました。一方で大好きなクライミングができないことや金華山のことが気になり、このままでいいのだろうかと複雑な気持ちで過ごしていました。
金華山のボルタリングエリアから見た海
むらかみ:震災から1年以上が過ぎた頃、テレビを見ていると、金華山黄金山神社の12年に一度のお祭り「巳歳御縁年大祭」を迎えるにあたり、参拝客が激減して困っていると報道されました。
「私は船をチャーターしてでも金華山に行きたい仲間を知っている。きっと何かできるはず」。そう直感し、知り合いのクライマー仲間に声をかけ、ボルダリングエリアの開拓で観光振興・震災復興の活動をやってみようと、2013年2月に13人で任意団体を設立し、8月に法人格を取得して「NPO法人FIRST ASCENT JAPAN.」となりました。
法人格を取得したのは、覚悟を持った組織として社会と交渉し、活動していきたいと思ったからです。
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