観光客の安全は住民の防災意識から 神奈川県鎌倉市
県内最大の津波想定
由比ヶ浜海水浴場
夏、神奈川県鎌倉市の海水浴場には多くの客が訪れ、海を楽しんでいる。この中の何人が、地震や津波が起きたときの避難経路や、最短距離の避難場所を認識しているだろうか。
市域が広く海に面する鎌倉市は、これまで何度も津波に襲われている。今後も南海トラフ巨大地震などによる津波の来襲が想定されている。
市では住民はもちろん、平成25年に「観光客等地震・津波対策ガイドライン」を策定し、観光客も想定して対策を進めている。観光客の防災対策はまだ進んでいない地域も多いが、鎌倉市ではどのような対策を進めているのか。どんな対策から始めたらいいのか。鎌倉市防災安全部次長の長﨑聡之さんに話を伺った。
2011年の東日本大震災で、地震や津波の被害が大きく伝えられると、市民の間に不安が広がり、市への問い合わせも相次いだ。自宅の海抜の問い合わせが多かったことから、市では2011年8月に「海抜マップ」を発行して各世帯に配布した。
2011年12月、東日本大震災を受け、神奈川県が津波の高さの想定を見直した「津波浸水予測図(素案)」を公表した。鎌倉市で想定される津波の高さは最大で14.5mとなり、それまでを上回って県内でもっとも高い想定となった。津波浸水範囲も大きく広がった。また、2015年2月に公表された新たな浸水予測では、地震発生から津波到達まで、最短でわずか8分と想定された。
2012年3月に正式に公表された「津波浸水予測図」を基に、鎌倉市では2013年3月に「津波ハザードマップ」を作成し直した。「何とかしなきゃいけない」という意識が市民の間に生まれてきたと長﨑さんは話す。
市ではその後も、2014年2月に「かまくら防災読本」を全世帯に配布するなどし、各地区で防災訓練が行われている。
避難の原則は、「海から離れ 高いところへ 足で避難」だ。高台への避難が間に合わないときのために、市では「津波来襲時緊急避難建築物(津波避難ビル)」を指定している。
津波来襲時緊急避難建築物(津波避難ビル)指定プレート
しかし、市内の広い範囲が古都保存区域、風致地区、景観地区に指定されており、建物の高さはエリアによって8~15m以下に制限されている。
長崎:
「最大で14mの津波が来る可能性があるので、そういったエリアでは高台に逃げるしかないのです。自分の足で高台に逃げてください、どうしても間に合わない時はビルに逃げてください、という2段階で考えています」
さらに昨年度には、津波避難計画(全市版)に伴う地域別実施計画の策定に向け、海沿いの町内会の代表に集まってもらい、ワークショップを行った。道が狭い、いつも渋滞しているなど、地元住民ならではの情報が集まった。
長崎:
「活発に意見が出ました。狭い道では、人が多かったり、車が来たりすると詰まってしまいます。分散して複数のルートで避難所へ向かう方が早く進みます」
こうした情報をまとめた「津波避難経路マップ」も、海沿いの地区の各世帯に配布した。
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