シティプロモーションと観光振興 地域へのプライドが観光を変える
「地域魅力創造サイクル」の四つのステージ
地域魅力創造サイクルの四つのステージ
「発散」では地域の個別魅力を過剰に発散させる
発散ステージにおいて必要なことは「過剰」である。関心を持った必ずしも多人数ではない市民とともに、地域の個別魅力を過剰に発散させる。参加者が、一人あたり50、100という数の地域の個別魅力を提示するように促すステージとなる。一人数個程度の個別魅力であれば、一般的に言われている魅力を述べれば済む。
しかし、地域の持つ個別魅力の過剰な発散を求めることで、従来はあたりまえのこととして見過ごしていたさまざまなものが魅力として立ち現れる。過剰な発散は異化を促す。あたりまえのものが次々に魅力としても語れることに気づけば、まちの風景は一変する。
「共有」では個別魅力を実際に体験し、学ぶ
共有ステージでは、過剰に提起された個別魅力を実際に体験し、学ぶ。これらは地域魅力キャラバンや地域学習として行うことができる。机上での取り組みを主とする発散ステージに比べ、共有ステージは、あたかも散歩であり、ミニツアーであり、楽しみを基礎とする学習となる。
これらを基礎に、地域に関わる人々の参画を、共有ステージ以上に求めることができれば正統性エンジンは力を増す。地域に関わる人々を、シティプロモーションの当事者化する意図もある。
「編集」では個別魅力を群として構成
編集ステージでは、まず、市民の参画のもと、発散・共有した地域の個別魅力を五つ程度の「魅力群」として構成する。自然や文化、歴史などのカテゴライズではない。それぞれの魅力に通底する一つの物語を語れるようなグループとして魅力群をつくり、それぞれに名前を付ける。名前の付けられた五つ程度の魅力群が重なったものが、その地域が差別的優位性を持ち得る場所(Battle Field:戦うべき場所)になる。これらの魅力群を十分に重ねることのできるまちは、このまちだけであるという優位性の場所である。
宇都宮市のブランドメッセージ「住めば愉快だ宇都宮」
編集ステージでは、重ねられた魅力群を基礎にブランドメッセージを提起することが求められる。ブランドメッセージとは「既にこうだ」ではない「こうなろうとする」という宣言である。宇都宮市における「住めば愉快だ宇都宮」、浜松における「出世のまち浜松」はいずれもブランドメッセージである。
それぞれのまちにある個別魅力を魅力群として把握し、それらの重なる場所をBattle Fieldとして設定し、われわれのまちは、地域に関わる人々とともにどのようなまちになっていこうとするのかという宣言である。こうしたまちとして世界一のまちになるという未来に向けたメッセージであり、その実現への参画を市民に期待するメッセージである。こうした「言葉」に関わる作業にはプロフェッショナルの力も必要となるであろう。
発散ステージ、共有ステージを伴走してきたプロフェッショナルな力により、いくつかのブランドメッセージ案が提起され、それらを市民とともに選んでいく過程。これが編集ステージであり、さらに多くの市民が、気軽なアンケートや話題提起により参画が可能となる。正統性エンジンの強さは増していく。
「研磨」で改めて地域の現状を見直す
最後に研磨のステージがある。ここで改めて地域の現状を見直す。ブランドメッセージを基礎としたときに、まだまだ磨き上げたい個別魅力がある。解決しなければならない課題がある。その作業が研磨となる。「課題ばかりの、こんなにだめなまちだ。」から始めるのではない。「世界一になれるまちをつくるために、この魅力を磨き、この課題を解決しよう」から始められるまちをつくる。シティプロモーションとは、そうした仕掛けでもある。
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