山陰地方初運行「石見レストランバス」に取り組むミツバチたちの挑戦

江上尚合同会社EGAHOUSE&COMPANY、株式会社GPA、株式会社ゴウツゲストハウジーズの3社代表

2018.05.21島根県

石見レストランバスというツールをどう使いこなすか

山陰地方初運行「石見レストランバス」に取り組むミツバチたちの挑戦
伝統工芸品の石州石見焼の窯元を訪ねる

 石見レストランバスは、「実行委員会方式」で運営をしました。実行委員長は、浅利観光株式会社の常務取締役植田智之さん。江津市で生まれ育ち、一度は東京で働くも故郷の活性化のためにUターン移住されて、ホテル業・飲食業・ガソリンスタンド業・小売業などを展開する家業を継いでいらっしゃいます。リーダーシップを発揮される植田さんの呼びかけで、食材加工を手がける中央弁当の青笹輝和さん、旅行業を手がける弊社GPAが参画し、実行副委員長を私が引き受けました。

 また、オブザーバーとして島根県観光振興課の皆さん、島根県西部県民センター商工労働部商工労政課に事務局を置く石見観光振興協議会の皆さん、島根県観光連盟の皆さん、江津市・浜田市・益田市観光協会の皆さん、観光施設や飲食店などで構成されている石見ツーリズムネットの皆さんとともに実行委員会を立ち上げました。

 島根県は100年間ずっと人口減少が続いている稀有な土地柄ですから、プレイヤーが圧倒的に少なく、ある意味官民が協働しなければ何も動かせない側面があり、ただそれは一緒に動きだすと、ものすごいスピード感で進めることができる良さもあると、今回の取り組みで実感した次第です。

 実際、石見レストランバスは2017年10月5日に植田さんがやると決めて、即時実行委員会を組成、ツアー造成を行い、販売開始は12月26日でした。また、ローカルメディアの皆さんも多分に協力してくださり、新聞・テレビ・雑誌・Webさまざまな媒体で、運行前、運行初日、運行中日と、石見レストランバスの情報を何度も発信してくださいました。

 しかし、レストランバスを運行するのは、相当な覚悟が必要です。日本に3台しかない特別仕様のバスは、所有者である株式会社 WILLERからのレンタル。レンタル期間は3か月間、2018年1月26日からスタートしたツアー実施期間は3月18日まで。土日祝は17日、平日は35日で運行可能日は合計52日です。平成28年度島根県観光動態調査を参照すると、観光消費額単価は県内客・日帰り3,875円、県外客・日帰り7,206円です。これを参考にしてツアー価格0.5万円に設定した場合、座席数は最大25名なので、1本運行すると売上は12.5万円。毎日1本運行すると52日間で625万円、毎日2本運行なら1,250万円と、狸の皮算用をしても、山陰地方初運行のリスクを考えれば、それほど魅力的な数値にはなりません。

 さて、観光産業のオフシーズンである1月~3月に稼働率100%で収支計画を立てていいものでしょうか。仮に、1便あたりの乗客率60%、1日2本で52日間運行の稼働率50%なら390万円の売上になります。費用の内訳は、主な固定費としてバスレンタル料および車両登録諸費用、広告宣伝費、ツアー造成費があります。主な変動費の内訳は、バス会社のバス運行費、食材費、人件費です。レストランバスは、これまでに運行した地域が少ないこと、ローカルコンテンツを扱うことから変数設定の参考値がほぼなく、特に変動費についての予測が極めて難しいのです。相当な覚悟というのは、万が一赤字になったとしても、やり切ることができるのか、なぜこの取り組みをするのかを、関係者全員で言語化して共有の認識を持っておく必要があるということです。

 石見地方の観光資源は、どれも小粒です。1粒だけで1日を過ごすのは極めて難しいのです。視点を変えれば、周遊させる仕組みがあれば、充実したツアーになる。ひいては地域経済へのインパクトもそれなりに期待できると考えました。では、どのように実現させるかを考えた時、石見地方の「食」にフォーカスを当てて魚・肉・野菜・酒などを、何かしらの「移動手段」でつなげればいい。けれど、二次交通が極めて脆弱なこの地域では、結局のところ貸切バスを走らせるしかないという結論に至ります。私たちは、石見レストランバス事業の目的を「地域に眠る食の資源を掘り起こし、つなげることで新たな広域観光コンテンツを創出する」としました。

山陰地方初運行「石見レストランバス」に取り組むミツバチたちの挑戦
活気ある浜田港やなぎ水産を訪れる

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