外国人観光客・ガイド・講師のつながりを育てる 姫路城英語ボランティアガイドの取り組み

玉田恵美NPO法人姫路コンベンションサポート 理事長

2018.02.07兵庫県

(3)地域の人材活用

 活躍するガイドの多くは60歳以上の男性か、子育てを終えた40代後半からの主婦である。旅行者のニーズは休日だけではないことを考えれば、この世代が必要不可欠であることは明白だ。

 もう1つはネイティブスピーカーの活用である。講座には必ずネイティブスピーカーを講師にするが、この役割をできるだけALTに依頼している。2~3年間という短期で来日する彼らは、日本人コミュニティに参加する機会が少ないと聞く。災害弱者は外国人旅行者だけではなく、在留の外国人にも当てはまる。実際に彼らに有事(地震や集中豪雨など)の際の避難場所などを知っているかと問うと「知らないが、誰かが教えてくれるだろう」という答えが返ってきた。ALTのソーシャルキャピタルは学校という組織を中心に構築されており、自治会や町内会といった身近であるはずの人たちとは乖離されている。英語ボランティアガイド養成講座の受講生が60歳以上の男性や主婦層が中心であることを考えると、この組み合わせは、ALTの日本での生活にも有意義であると言えるだろう。

 行政サービスの限界が叫ばれる今、住民参加の自治は必要不可欠である。地域課題の解決に加え、そこにはかかわる人たちの「やりがいや生きがい」という要素が加わらねば継続や発展は望まれない。

(4)姫路における英語ボランティアガイドの現状と課題

 姫路での英語ボランティアガイドのニーズは、ビジット・ジャパン・キャンペーンに加えて、2015年度に姫路城大修理を終え、再オープンしたことにより飛躍的に増加した。

 2011年度には16万人だった姫路城登閣者も2015年度には286万人となっている。ガイド依頼件数も、2011年度までは年に数名だったのが、2015年度には838名となった。

 当方のガイドグループの情報発信が、日本語でのホームページのため予約者の多くは日本人だ。企業から外国人スタッフ、あるいは取引等で来日されたお客様をガイドしてほしいというものや、個人からはホームステイ中の外国人を案内してほしいというものもあり、外国人の他に1~2名の日本人が同行するのも特徴だ。昨今は、これに旅行会社からの依頼が加わるようになり、ニーズは格段に多くなった。団体だと3~4名のガイドが必要となるため、活動している延べ人数は飛躍的に増えている。3月から、英語の予約サイト「The Himeji Castle English Speaking Guide Group 」からも発信をしたところ、旅行前に予約を入れる個人旅行客も増えてきた。

 一方で、ガイド依頼が増えれば増えるほど課題になるのがガイド数の確保である。

 毎年のように英語ガイド養成講座を開講し、20名前後の新しいメンバーを追加しているが、それでもガイド数は足りない。前述のとおり養成講座を受講するだけではガイドとして即戦力にはならず経験知は必要不可欠だからだ。また、自身のライフイベントによりガイド活動ができなくなる人も多い。人材の確保と育成、研鑽は活動を維持するために大切なことだ。加えて彼らのモチベーションをキープすることこそが、運営者がやるべき最重要なことだと考える。

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当ガイドグループのガイド実施人数と姫路城入場者数の比較

魅力あるまちとは

 観光が多様化する今、「観光都市姫路は安泰だ」と言われる時代は終わった。「外国人に人気の日本の観光スポットランキング2017」注2)で姫路城は13位であるという現実は、決して安穏としていられるものではない。姫路市は特別ではなく、一地方都市として、通過型から滞在型にどうシフトするか、またどうリピーターを確保するかと他都市と全く同じ課題を抱えている。

 筆者は15年の市民活動を通じて、魅力あるまちとは、そこに住む市民が生き生きと暮らしていることではないかと考える。それは住民が自身の手で作り出し発信するものだ。それこそが光を放ち「観光」という言葉となって都市に戻ってくる。今、地域に求められるものは行政、地域住民がそれぞれの得意分野で活動できる「プラットフォーム」ではないかと考える。

注1) ALT=Assistant Language Teacher 外国語指導助手。主に学校に教育委員会へ属している。

注2) トリップアドバイザー http://tg.tripadvisor.jp/news/ranking/inboundattraction_2017 (2017.7.27最終アクセス)

リンク: NPO法人姫路コンベンションサポート 

 

著者プロフィール

玉田恵美

玉田恵美NPO法人姫路コンベンションサポート 理事長

1969年兵庫県生まれ。大阪市立大学大学院創造都市研究科都市公共政策修了。ホテルマン、行政職員(嘱託)を経て、2002年にNPO法人を設立。「まちを元気にする人をサポートする」をミッションに、住民たちとともに地域資源の発信を通じたまちづくりに従事する。

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