外国人観光客・ガイド・講師のつながりを育てる 姫路城英語ボランティアガイドの取り組み
英語ボランティアガイドの取り組み
筆者が運営をするNPO法人姫路コンベンションサポートは「まちを元気にしたい人をサポートする」をミッションに活動をし、16年を迎えた。英語ボランティアガイドの取り組みは今年で12年を迎える。
(1)姫路城英語ガイドプロジェクト
姫路に来られた観光客のうち、どれほどの人が姫路城の素晴らしさを十分に感じ帰られるのだろうか。「姫路城英語ガイドプロジェクト」はそんな素朴な疑問から起こった。
日本で初めて世界文化遺産に登録された姫路城は、その雄大な美しさから白鷺城と言われ、日本人はもとより外国人にも非常に人気が高い。当時(2005年)、姫路城に訪れる外国人観光客は年間16万人。外国語ボランティアガイドグループはすでに別の2団体が存在していたものの、毎日活動できる人数は限られていた。その一助になればとまず取り組んだのが、英語ガイドブックの作成だった。苦戦する筆者たちをサポートしてくれたのが、当時ALT注1)で来姫していたアンドリュー・リチャードソン氏だった。彼は日本文化が好きで、我々の趣旨に賛同、彼の手助けにより約1年半をかけて姫路城英語ガイドブックを完成することができた。このガイドブックの素晴らしい点は、日本語のガイドブックを訳したものではなく、外国人の目でみたガイドブックであるということだ。完成したものはA4サイズで100ページを超える大作となった。
このガイドブックを使った次の展開が、英語ボランティアガイド養成講座だ。姫路城は説明ポイントが多い上に、お客様の興味がある分野もそれぞれで専門的な英語力も必要だ。今までガイド数が増えなかった要因はそこにあると考えた。我々が目指すガイド像は、「完璧な英語を話す人」ではなく「エンターテイナー」とした。
こうして、2006年から始まった姫路城英語ガイド養成講座は、現在までに約200名の受講者を得ることができた。受講生のうち70名ほどがガイドとして活躍している。
世界文化遺産に登録された姫路城。外国人観光客からも非常に人気が高い
(2)養成講座
講座は週1回、1時間半で、全10回行われる。うち2回はオンサイト(現地実習)を兼ねての研修を入れる。初授業で受講生たちと3つの約束をする。
「Don’t be shy(恥ずかしがらない)」
「Collaborate(協力し合う)」
「Enjoy yourself(楽しむ)」。
講座は前述のテキストを基本に、ネイティブスピーカーとロールプレイで進める。毎週の予習復習はかなりハードだ。英語ができない、わからないからと恥ずかしがって尻込みしていると、必ず挫折するのは経験ずみだ。受講生同士で助け合いながら授業を受けて欲しいと、最初に約束する。これによって、友情がかなり深まり、脱落者を出すことなく受講を終了することができるのだ。
受講生が最初にくじけるのが現地実習である。ガイドは時間との闘いだ。姫路駅から姫路城まで徒歩で約20分。大天守まで登閣するとゆうに2時間はかかる。旅行者には、タイムリミットが付き物である上に、2時間を超えるころには疲れしか見えなくなる。ガイドが必要とされるものは英語力や知識だけではないと気づく瞬間だ。特に必ず聞かれるのが「美味しいごはんはどこがよい?」「おすすめのお土産ものは?」などのまちの情報である。「グルテンフリー(小麦を取らない食事)」や「ハラル食」などのリクエストも加わる。
地元のガイドの良いところは、痒い所に手が届くきめこまやかなサービスである。講義で学ぶことよりも、いかにまちに精通しているかが重要であり、それは日ごろの自身のアンテナの張り方次第であることに改めて気付かされるのだ。
養成講座では恥ずかしがらず、協力し合い、楽しむことが大切
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