共有する新しい経済の仕組み「シェアリングエコノミー」 地域課題の解決に導く可能性について一般社団法人シェアリングエコノミー協会事務局長 佐別当隆志氏に聞く

佐別当隆志株式会社ガイアックスブランド推進室/一般社団法人シェアリングエコノミー協会事務局/Miraieオーナー

2017.11.30

共有する新しい経済の仕組み「シェアリングエコノミー」地域課題の解決に導く可能性について一般社団法人シェアリングエコノミー協会事務局長 佐別当隆志氏に聞く
Miraieの内装は木造のログハウスのようになっていて、温かみのある空間が広がっている

佐別当さんとシェアリングエコノミーの出合い

――プライベートではシェアハウス「Miraie」を運営していますが、どんなことがきっかけになったのですか

佐別当:2010年ごろ、東京の恵比寿にあるソーシャルアパートメントで暮らし始めたことがきっかけです。
 世代や職業、国籍などさまざまな住民と交流し、人とのつながりで自分が成長する暮らしに魅力を感じました。
 こういう環境を自分の子どもにも体験させて、視野を広げたり、どこに住んでも生きていけるたくましさにつながればと思ったんです。しかし家族で運営するシェアハウスは当時ありませんでしたので、台湾人の妻と相談して東京の品川区に建てることになりました。

 Miraieは3階建てで、1階にはシェアハウス2部屋とゲスト用の部屋が1部屋あり、それぞれシャワーとベッドを備えています。2階は共有スペースでリビング、キッチン、玄関、3階は私たち家族の居住スペースになっています。
 リビングでは子育てに関するワークショップや台湾料理教室などのイベントを定期的に開催し、シェアメイトやゲスト、地元の人がつながる新しい暮らし方を実践しています。

共有する新しい経済の仕組み「シェアリングエコノミー」地域課題の解決に導く可能性について一般社団法人シェアリングエコノミー協会事務局長 佐別当隆志氏に聞く
家庭で再現できる台湾料理を学ぶだけでなく、日本と台湾の文化の比較、共通点などを食から体験ができる。奥様のリーさん(右端)のフレンドリーな人柄も人気

――ご近所からの反応はいかがですか

佐別当:ご近所に挨拶をして、私たちの暮らし方を説明してから家を建てました。
 暮らし始めてからは、町内会に入って地域とのつながりを持つようにして、閉鎖的な運営にならないように気を付けました。
 妻がいろいろな料理をつくってはご近所に配ったり、インターネットやパソコンなどの操作でちょっとした困りごとがあれば私が対応したり、そうしたつながりのおかげで、私たちの暮らしを知っていただけるようになり、地域からは受け入れてもらっています。最近では戸越銀座商店街の人とハロウィンイベントを企画するまでになりました。

共有する新しい経済の仕組み「シェアリングエコノミー」地域課題の解決に導く可能性について一般社団法人シェアリングエコノミー協会事務局長 佐別当隆志氏に聞く
地域とのつながりを大切にしたハロウィンイベント

――今後、やってみたいことはどんなことですか

佐別当:実はこの地域の再開発事業によりMiraieを引っ越さなければならなくなりました。
 偶然にも同じころ、幼稚園や保育園などの施設運営を手がける知り合いから、保育園の空いた時間とシェアサービスを連携して、地域の人が交流しやすい空間にできないかという相談を受けたんです。
 そこから構想がどんどん膨らみ、私たち家族が住む建物に保育園付きのシェアハウスとゲストハウスが融合した住宅を、最も待機児童人数が多い渋谷区の代々木上原に建てることが決定しました。2018年11月のオープンに向けて準備を進めています。

 保育事業は企業主導型保育制度を活用しています。この制度では複数の企業が共同で保育園を利用することができ、地域の子どもの受け入れもできるんです。つまり、保育園を運営する学校法人正和学園の職員と私が所属する株式会社ガイアックス、提携企業社員などの子どもが優先して入所できるほか、近隣の子どもを受け入れて、待機児童解消につなげたいと思っています。
 他にも、遅い時間までの延長保育や夜間保育、休日保育など、親の多様な働き方に対応できる仕組みになっているのが魅力です。
 そして、学童施設とカフェを併設する予定で、地域の人やゲストハウスの宿泊者、園児などさまざまな人が交流して、新たなコミュニティを生み出すことを目指しています。

 代々木上原の土地を購入する資金は、先の制度の助成金を活用し、不足分は不動産に特化したクラウドファンディング「Crowd Realty」で1億7,400万円を集めました。10日間で集めることができたのは、支援者へ収益をリターンするという協働型の運営に共感してくれたのだと思います。

 シェアリングエコノミー伝道師として今後やっていきたいことは、まだいろいろとあります。さまざまな地方を巡っていると、立派な公共施設がたくさんあるのに、あまり有効活用されていないように感じます。その一方で『看護師が足りない』『保育施設が足りない』など、さまざまなモノが足りていないという声を聞きます。
 例えば、図書館や病院、介護施設などの公共施設とシェアリングエコノミーを融合させ、地域の人の力を借りながら、足りてないことを少しずつ解消していくことができればと思っています。

リンク:一般社団法人シェアリングエコノミー協会

(インタビュー・文/塩田恵理子)

取材対象者プロフィール

佐別当隆志

佐別当隆志株式会社ガイアックスブランド推進室/一般社団法人シェアリングエコノミー協会事務局/Miraieオーナー

2000年、ソーシャルメディアのトータルソリューションを手がける株式会社ガイアックスに所属。広報・新規事業開発を経て、2015年秋よりシェアリングエコノミーに特化したWebメディア「Share! Share! Share!」をリリース。2016年、一般社団法人シェアリングエコノミー協会を設立し、事務局長に就任。 2017年、内閣官房シェアリングエコノミー伝道師に任命される。日本におけるシェアリングエコノミーの普及・推進と共助社会の実現を目指し、法規制の緩和やユーザー理解の取り組みに従事。政治起業家としても活躍中。

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