地域のやる気を引き出す「100円商店街」 考案者・齋藤一成さんに聞く、効果を最大化するためのポイント
新庄市南本町商店街で開催された100円商店街。歩道を埋め尽くすほどの人が集まる
2004年、山形県新庄市の南本町商店街で「100円商店街」が始まった。100円商店街とは、商店街全体を100円ショップに見立て、参加するすべての商店で100円商品を販売する販促イベントで、南本町商店街での開催を皮切りに全国各地へ広がっている。このイベントを考案したのが、NPO法人AMP(アンプ)の理事長を務める齋藤一成さん。市の職員でもある齋藤さんは、新庄でのまちづくり活動を他地域でも伝授すべく、勉強会などで全国を飛び回っている。そんな齋藤さんに、100円商店街はなぜ全国に広がったのか、効果を引き出すための手法などについて、話をうかがった。
スタッフのつぶやきと大須商店街の活気をヒントに生まれた100円商店街
NPO法人AMP理事長 齋藤一成さん
2003年12月、新庄最上地域の活性化活動を行う任意団体AMPが設立(2009年6月よりNPO法人化)された。100円商店街はAMPが最初に手掛けた事業である。
AMP立ち上げ後、まちを盛り上げるための事業を考えていた齋藤さんは、お店で何年も売れ残っている商品を見てスタッフがつぶやいた「ワゴンセールをやったらいいのに」という一言から、さまざまな商品を100円で売る100円商店街のアイデアを思いついた。その後、全国の商店街を視察し、名古屋を代表する商店街で、市内外からも人が集まる大須商店街のにぎわいに注目した。
齋藤:名古屋の大須商店街は、100円商店街を考案する際のヒントとなった場所です。そこでは、店頭に商品を並べ、複数の店舗が大きな声でお客さんを呼び込んでおり、通常の営業時でもイベント時のような活気にあふれていました。
この活気はどうしたら生まれるのだろうか。齋藤さんは商品の並べ方とお客さんへの声かけに着目し、100円商店街に取り入れることにした。こうして、店員が積極的に声をかけながら、100円商品を店頭で売る100円商店街の仕組みが原型が生まれた。しかし、100円商店街を開催するまでの道のりは決して楽ではなかった。
齋藤:見たことも聞いたこともない事業ですから、最初は商店街の方々に理解していただくまで時間がかかりました。商店街の副理事長や販促部長に協力していただき、1軒1軒のお店を説得しに回ったり、商店街の役員会や総会などで私から話をしたりしました。また、AMPではイベントなどを行う際、報道関係者に向けてプレスリリースを出しますが、最初の100円商店街の告知にはまったく反応がありませんでした。しかし、第1回100円商店街開催の1週間前、東北の地方紙の河北新報さんがA4サイズ1枚ほどの大きな記事を掲載してくれました。そこからYahoo! JAPANのトピックスに掲載され、一気に全国からの問い合わせなどが来るようになりました。
新聞記事、ネット記事の効果もあり、第1回の100円商店街には、想像を超える数の人が集まったのだという。その後、問い合わせだけでなく、100円商店街を視察する自治体も増えていった。
100円商店街はなぜ全国に広がったのか
開始から今年で13年が経ち、100円商店街はいまや北海道から鹿児島まで全国127市町村、約330か所の商店街で開催されるまでになった。「バル」「まちゼミ」とともに商店街活性化「三種の神器」の一つと言われている100円商店街は、なぜ爆発的な広がりを見せているのだろうか。
齋藤:100円商店街は、低いコストで実施できます。かかる費用はチラシ製作費と、配布する際にかかる新聞折込費用くらいです。チラシ自体もA4の単色刷り。また、他のイベントのように大道芸人や有名人を呼ぶ必要がないため、謝金なども発生しません。
商店街が負うリスクが小さいため、どんな地域の商店街でも実施しやすい。さらに、参加店が直接収益を上げることができること、参加業種に制限がない(業種によってさまざまな工夫が見られる)こと、新規顧客が確保できることなど、個々の商店にとっても直接的かつ大きなメリットがある点も特徴である。
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