地域のやる気を引き出す「100円商店街」 考案者・齋藤一成さんに聞く、効果を最大化するためのポイント

齋藤一成NPO法人AMP 理事長

2017.09.13山形県

100円商店街の効果を引き出すためのポイント

100円商店街齋藤一成
店内で清算をするために店の前に並ぶお客さん

 100円商店街が最大限の効果を発揮するためには、ただ単に100円商品を販売すればいいわけではない。事業の効果を引き出すためには何が大切なのだろうか。そのポイントは「100円商店街三か条」に集約される。

<100円商店街三か条>
1.100円商品は外に陳列すべし~なるべく多くの客に見せるべし。店内に隠すなかれ~
商店街に訪れたお客さんには、「店内に入ったら何か買わないと店を出にくい」という心理が働くため、なかなか入店しない。店の外に商品を陳列することで、気軽に商品を見てもらうことができ、「買っても買わなくてもよい」という雰囲気を作りだすことができる。

2.外でお客様と会話すべし~客を誘い込み、店内の商品を見せるべし。素通りさせることなかれ~
店員が店の前に出てお客さんを呼び込んだり、接客したりする店が増えることで、商店街全体が活気に包まれる。また、外で接客をすることで、お客さんが店の前を素通りしにくくなる。

3.100円商品の清算は、店内ですべし~より通常商品を多く売るべし。100円商品のみ買わせることなかれ~
店頭で清算してしまうと、お客さんは店頭に並ぶ商品だけを見て次の店に移動してしまう。店内で清算することで、店内商品の「ついで買い」が期待できる。また、その店に初めて入るお客さんにとっては、店内の雰囲気や品揃え、商品の価格などを知るきっかけにもなる。

 3の店内清算に関しては、「入ったことのない店に入る」というお客さんにとっての最初のハードルをクリアさせることができるため、新規顧客の獲得の観点からも大事なポイントとなっている。その店や商店街を訪れたことがなかったお客さんが、100円商店街をきっかけに気軽に訪れるようになることが、長期的に見れば大切であり、それは100円商店街の最大の目的と言えるだろう。

 これら三か条以外にも、100円商店街を成功させるポイントがいくつもあり、齋藤さんは、全国で勉強会を行いながら、実施を考えている自治体や商店街関係者にこれらのポイントを伝授している。

齋藤:勉強会で訪れる地域の中には、「納得してくれない人がいるので、代わりに説得してくれないか」とお願いされることがあります。こういった場合でも、私たちが直接動くことはせず、地元の人たち自ら動いてもらうようにしています。私たちが動いてしまうと、地域が自らの力で問題を解決できなくなってしまうからです。私たちの活動は、勉強会を聞きに来られた方々にアイデアの引き出しをたくさん持たせ、最終的には、その地域が100円商店街をきっかけに独自の活性化策を自ら生み出し、そして、私たちのアドバイスが必要ではなくなるくらいの体制を築き上げていくことこそが、本当の目的だと思っています。

 齋藤さんは、100円商店街を広めることよりも、全国各地の商店街が自らの力によって活性化し、まちが元気になることを目指している。

 

個々の店のアイデアから生まれた100円商品

 100円商品といっても、ただ単に店の売れ残り商品を100円にして売っているわけではない。何を売るのか、全国の100円商店街では、それぞれの店の自由な発想からさまざまなアイデアが生まれてきた。

<個性的な100円商品>
葬祭会社の「納棺体験」
その名の通り、100円で実際の棺桶に入ることができる。

お寺の「六文字写経」
本堂で「南無阿弥陀仏」を写経してお納めすると、住職が燃やして祈祷してくれる。

自動車ディーラーの「車内クリーニング券」
100円クリーニング券を使用するために、後日お客さんが来店する。その日、その場限りではなく、来店していただくための商品。さらに、クリーニングに訪れたお客さんに対して、他の商品を勧めたり、関係を築いたりすることで、その後の売り上げにつながることもある。

齋藤:商品は、目に見える物だけではありません。100円で売るのは、そのお店の“売り”なんです。「青果店だから野菜」なのではなく、ネタの鮮度や店員の人柄などといった、その店の売りをとがらせていくと100円商品が見えてきます。

 何を100円にするか、店の売りは何かを考えていくことで自分の店を客観的に見ることができる。齋藤さんの役割は、100円商店街をきっかけに店や商店街に気付きを促すファシリテーターとも言える。

 100円商店街は、イベントとして盛り上がるだけではなく、商店街やまちがその後どのように変わっていけるかの変化を目指した事業でもある。事業をきっかけに、店や商店街は自らアイデアを出すようになる。また、お客さんは、100円商店街やその後の商店街の取り組みをきっかけに足を運ぶようになる。

 “人”を変えることが事業の本当の成果となるのだろう。

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