茶の生産地におけるティーツーリズム

吉見淳代日本茶インストラクター

2017.01.23

茶の生産地におけるティーツーリズム
インドの東北部に位置し、ダージリン地方を走る「ダージリン・ヒマラヤ鉄道」

茶の生産地の人々の生活と一体化した風景

 広大な緑の茶園で茶が栽培されている「茶の生産風景」は、茶の生産地において最大の観光資源である。ケニアでは、茶摘みは伝統的に男性の仕事とされている一方で、スリランカでは、タミル族の女性の仕事である。広大な緑の茶園で、女性たちがカラフルなサリーをまとって茶摘みをする姿は美しく、印象的な風景となっている。また、整然と茶樹が並ぶ茶園の風景も、地域の地形などによってその特徴は異なり、観光の対象となっている。

 また、世界には中国から広がった茶の歴史が遺されており、それが「茶の歴史を遺す景観」として、観光資源となっている。歴史のある茶の生産地には、古い茶樹や茶の運搬に利用されていた交易路や鉄道などの痕跡が遺っている。茶の発祥の地である中国雲南省には、「樹齢2000 年を超える茶樹」や、雲南省からチベットに茶を運んだ交易路として「茶馬古道」があり、雲南省には世界で最も古い歴史が今も遺されている。また、インドには、19 世紀後半に紅茶輸送に使われていた「ダージリン・ヒマラヤ鉄道」があり、これは世界遺産にも登録されている。

 茶が日常的に飲用されている生産地には、茶で賑わう街の景観が「茶の生活景観」として観光資源となっている。中国や台湾には、街中に茶館や茶芸館が点在しており、日常的に交流する活気のある場となっている。さらに杭州市にある茶文化村では、住民が観光客に茶を振る舞ったり、雲南省では、地域一帯が茶の博物館と言われたりするほど茶が生産地の人々の生活に根付いている。加えて、インドやバングラデシュでもチャイを購入できる小さな売店があり、街中に人々が集う風景が見られる。

茶の生産地におけるティーツーリズム
インドでは屋台でチャイを楽しむ。甘いだけではなくショウガなどのスパイスが効いている

1 2 3 4 5

スポンサードリンク