茶の生産地におけるティーツーリズム
世界におけるティーツーリズムの特徴
ティーツーリズムが広がっている国や地域において、茶は地域の人々にとってどのような存在なのだろうか。図1は、世界の茶の生産量上位国を示したものであるが、ティーツーリズムはスリランカやインドなど、かつて西欧諸国の領地として宗主国の消費のために茶を生産していた国を中心に広がっている。それらの国や地域では、茶は自国で消費する飲料として広まっていたと同時に、外貨獲得のための重要な輸出作物にも位置付いており、生産地においては特別なものであったと考えられる。茶は生産地にとって身近でありながらも、地域のアイデンティティーを象徴するような特別なまなざしが向けられていると言えるだろう。
図1 世界の茶の生産地
また、それらの国や地域のティーツーリズムにおいて観光の対象となっているものとしては、図2に示す産地銘柄、風景、施設、イベントが挙げられる。
図2 ティーツーリズムにおける観光対象
地域の茶を代表する産地銘柄
「産地銘柄」とは、一般的に生産地名を冠して、「○○茶」と表示するものであるが、ティーツーリズムにおいて観光の対象となっている産地銘柄は、その地域を代表する特徴的な茶が産地銘柄として存在している。
例えば、中国では地域名を冠した産地銘柄のなかに「中国伝統十大名茶」と呼ばれるものがある。それらは国内外で特に親しまれ、高品質で、希少価値が高い茶とされている。インドでは、ダージリン地方の「ダージリンティー」、アッサム地方の「アッサムティー」、ニルギル地方の「ニルギルティー」など代表的な紅茶があるが、それぞれの地域によって茶の味わいは異なり、生産地ごとにその特徴が際立っている。また、紅茶の代名詞にもなっているスリランカの「セイロンティー」についても、栽培地の標高によって品質を分類することで、栽培エリアごとにその特徴を細分化している。産地銘柄とは異なるが、台湾では「タピオカミルクティー」のように現代のライフスタイルに合わせた新たな飲み方が観光の対象になっているケースもある。いずれの国や地域も、茶の生産量の大小ではなく、他国または他地域と差別化された茶が産地銘柄として存在している。
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