和船を活かした河川観光舟運の実態と将来性

出口正登写真家
出口晶子甲南大学文学部歴史文化学科教授

2016.11.02

和船を活かした河川観光舟運の実態と将来性

東京に来たから船に乗ろう

 東京は河川観光舟運のメッカである。ハイテクの船あれば、手こぎの木造船あり、櫓こぎの渡しあれば、河海にまたがる遊覧あり、江戸城堀割の釣りボートあれば、屋形船ありと、便数・乗客数・コース・種類のいずれをとっても他を圧倒する活性が見られる。その傾向は今後一層拡大・加速するだろう。人口集住する大都市・東京だからこそ、江戸情緒あふれる木造和船が末永く継承される道がある。和船友の会による櫓こぎの検定制度はその画期的な取り組みで、おかげで技能を持った操船者を恒常的に輩出できるようになった。
 ここで鍛えられた船頭が各地のNPOによる遊覧事業を支え、手こぎの指導をするという事態も生まれている。猊鼻渓(げいびけい)や鬼怒川、天竜川など川下りの名勝地では船頭自らが船大工を兼務することで、和船の操船・造船双方の技術を継承する方法が定着し、効を奏しているが、ローカルネットワークで維持することが困難になった和船文化の継承には、都市からの援護が必要なのである。
 舟運が日常の交通手段ではなくなった今日、水の視点はとても新鮮である。歴史を体験するだけではない。江戸と未来都市トーキョーを「今、ここ」の時間と空間から立体視できるところに魅力がある。それは今までに見たことのない新しい風景なのである。

和船を活かした河川観光舟運の実態と将来性
東京隅田川 浅草・吾妻橋からお台場まで行く大型遊覧船が浜離宮に寄港する。東京の河川観光舟運は今、伸び盛り(2010年10月撮影)

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