国登録有形文化財建造物をめぐる旅

佐滝剛弘NPO産業観光学習館特任講師

2016.03.16

 路地を回った先にあるはずの古い民家。似たような建物が並んでいるがどれだろう? 目指すは「鈴木家住宅」だから、「鈴木」の表札が出ているはずだが、なんと「鈴木」が3軒もある。困っていたら、真ん中の鈴木家の長屋門の脇に、緑色のプレートがあって、誇らしげに「登録有形文化財 この建造物は貴重な国民的財産です」と書かれていた。やっと見つけた!

 私が国内を旅する目的は、ずばりこの「国登録有形文化財」の建造物を訪れること。現在、全国でおよそ1万500件もあって、しかも年に何度も新たに登録されて増えていく。私がこれまでに訪問したのは、およそ7割の7,100件ほどである。

登録有形文化財に授与されるプレート(01-0001は「旧札幌控訴院」)
登録有形文化財に授与されるプレート(01-0001は「旧札幌控訴院」)

 国登録有形文化財は、国宝や重要文化財とは異なり、建造物を「活用」しながらゆるやかに保存していくことを目的に1996年に設立された制度。対象となるのは、「築50年以上」を経た建造物で、かつ「国土の歴史的景観に寄与している」「造形の規範になっている」「再現することが容易ではない」のどれかにあてはまるもの。

 これではわかりにくいので、具体的な建物を見てみよう。

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