よりよき観光文化の継承にむけて 第1回   ニューツーリズムと従来型観光

古賀学松蔭大学観光メディア文化学部教授

2014.09.01

従来型観光地施策の活性化・継続で持続可能な観光振興へ

 ニューツーリズムは、従来型観光の反対側から真っ向に対決を挑んできたような位置づけになっているのではないでしょうか。そのような構図は誰もが求めてはいないのですが。

 新しい概念として持ちこまれることにより、継続性という視点が捉えにくくなります。温泉の発掘、温泉の効用、温泉地の環境、温泉の景観、地域文化、それらを活かすための施設・設備の整備、そしてヘルス・ツーリズムの推進といった流れであれば大変わかりやすいのではないでしょうか。しかし、こうした考え方は草津をはじめ多くあったはずです。ヘルス・ツーリズムは医療観光へと進み、地域とは無縁になりつつあります。ヘリテージ・ツーリズムという視点から発した産業観光は、結果工場見学という従来型観光へとたどり着いています。グリーン・ツーリズムも○○狩りへ。

 昭和50年前後に観光開発計画の手法、その改訂版である観光計画の手法という本を出版したことがあります。その多くの執筆者の中には環境庁の方も含まれておりました。その当時、観光振興計画においては、地域資源の把握、それも自然公園における保護・利用計画、鳥獣保護区などの土地利用規制や区分、気象条件などその地域の環境資源の把握は不可欠でした。また、これからは観光農業ではなく農業観光を推進すべきだという議論もなされました。観光農業は観光のための農業、農業観光は農業振興のための観光と、目的を農業振興においた観光のすすめです。少し前を振り返ると、ニューツーリズムは決してニューではなかったのです。

 そろそろ、ニューツーリズムと従来型観光が反目する状況を、性根を据えて変えていく必要があるのではないでしょうか。

第2回に続く)

著者プロフィール

古賀学

古賀学松蔭大学観光メディア文化学部教授

1972年社団法人日本観光協会に入協。計画調査課長、調査部長、総合研究所長を経て、2008年より現職。NPO法人観光文化研究所理事長、内閣府・国土交通省観光カリスマ選定委員会委員なども務める。専門分野は観光計画・調査、観光行政、造園計画。

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