よりよき観光文化の継承にむけて 第1回 ニューツーリズムと従来型観光
ニューツーリズムという枠は早く消滅すべき
これからの観光は、規制やルールが不可欠
ニューツーリズム系の希望が少ない理由として、次のような点が考えられます。
一つ目は、言葉が消費者に浸透していないということ。以前旅行会社が沖縄の旅行にエコツーリズムをうたって売り出したら全く売れず、同じ内容のツアーを自然を楽しむ系に直したら完売したという話を聞きました。最近では多少は言葉の浸透が進んではいると思いますが、多くの人にとって未だイメージが固定されていないのでは。
二つ目は、消費者のブームではなく受入側や行政施策としての長すぎるブームではないかという点。よくあることだが、リゾート開発然り、ペンション運営然り。作る側のブームであった。
三つ目は、宿泊旅行ではなく日帰り旅行としての位置づけにあるのでは。グリーン・ツーリズムを農業体験として位置づけている人々は、観光という範疇に入れていないのではないのか。農業体験と宿泊施設が結びつかない。観光のための農地や牧場は別として、農地を観光地と呼ぶ人はいないでしょう。
四つ目は、マニアックな旅行目的であり、需要はもともとから小さいものであるということ。これがニューツーリズムといわれる観光形態の特徴ともいえる、目的を絞った、どちらかというと趣味に近い活動形態であるということ。そのため需要がかなりマニアックなものであり、当然需要の分散化・個別化という特徴を有しているということ。
そして五つ目は、他の観光形態との比較対象としてまで育っていないのでは、また育ちにくいのではということ。まだ1年に1回も宿泊観光旅行にいけない人が半数近くもいるという現実の中で、年に1回の旅行を選ぶには、他の旅行形態、温泉だとか社寺詣でなどとの比較の対象になるほどの魅力には育っていないということ。日本のエコツーリズムは、ガラパゴス島やジャングルツアーなどに比べ、その対象がすでに日常的になっているものがほとんどで、あえて新鮮味を感じないのではないでしょうか。屋久島や沖縄なども先に観光旅行という範疇で行われていました。その上にエコツーリズムというベールをかけたような形となって進められています。そんなところでは、観光事業者の既得権的な意識がじゃまをしてしまうところが多いのです。
また当然、ニューツーリズムは一つの旅行形態に過ぎないですが、これが地域側においては地域全体の観光振興のすべてとして錯覚されているのではないでしょうか。
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