宿坊が持つ、インバウンド誘致と消滅寺社対策の可能性

堀内克彦宿坊研究会代表

2016.05.09

宿坊の良さは、びっくり箱

 このように、これまで一部を除いて交わりの薄かった行政や企業と寺社を、「観光」をキーワードに結びつけるのが宿坊です。そしてそれが成し得るのも、宿坊自体に大きな魅力があるからです。
 私は宿坊の良さは泊まるごとに発見がある、びっくり箱のような驚きにあると感じています。

 到着した時に護摩木を渡され、息を吹きかけてお焚き上げしていただくなんて、ホテルや旅館では絶対にありえません。一般観光客は入れない国宝のお堂に上がらせていただいたり坐禅や写経で自分自身と向き合ったり。戦国武将が過ごした部屋で食事をしたり、江戸時代の名もなき旅人が残した足跡を感じたり。どれもこれも生の体験でしか得られない、驚きの連続です。

 「宿坊-SHUKUBO」は、これから日本を代表する観光資源となっていきます。そのために必要なことは、他のインバウンド施策と同じく環境整備です。
 全国寺社観光協会は観光庁や文化庁、各種企業団体、そして超宗派的に寺社組織とも密に連携を取り、産学官ならぬ「産宗官」のパイオニアとなってきました。

全国寺社観光協会会報誌『寺社Now』
全国寺社観光協会会報誌『寺社Now』

 宿坊研究会はもっと一般旅行者寄りですが、寺社と人をつなぐことをテーマに宿坊情報の発信やイベント企画、企業やお寺のコンサルティング、コミュニティ作りなど、17年の蓄積を生かしたさまざまなプロジェクトを展開しています。

 今はまさに宿坊の夜明け前。インバウンド、地方創生、寺院消滅、宗教精神。どこか引っかかるものがある方は、ぜひ宿坊の動向にご注目ください。

著者プロフィール

堀内克彦

堀内克彦宿坊研究会代表

「人生を変える寺社巡り」がテーマの寺社旅研究家。宿坊研究会・縁結び神社研究会・お守り研究会を運営し、参加者1,000人を超える寺社旅サークルの主宰や宿坊サミットの開催、トークライブ、海外への日本文化情報発信、寺社好き男女の縁結び企画「寺社コン」をプロデュース。

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