文化発信の地としての離島

土屋久共立女子大学・順天堂大学非常勤講師

2012.04.16山口県

 離島が果たす国家的な役割は、国境の管理や領土・領海、経済水域、大陸棚の確保、密漁や密航の監視などの海の治安維持、生物・生態系の保全など多岐にわたっている。その中でも、離島が文化の宝庫であり、さまざまな伝統文化がいまなお継承され、日本文化に深みをもたらしている点は忘れられがちである(2011年度、重要無形文化財指定件数に占める島の割合は8.2%、世界文化遺産では9.1%)。

 現在日本には、約6,000以上もの島が存在し、そのうち、有人離島は400以上にも及ぶ。この離島の存在により、日本の広がりは東西南北3,000㎞以上に及び、多様な自然資産・文化資産が担保されているのである。

 以前、筆者の知人が、島旅を海外旅行と似ているといっていたことがあったが、文字通り離島は「海外」であり、本土とは異なった固有な文化を有していることからも、この知人の感覚をむべなるかな、と思ったものである。

 こうした、それぞれの島ならではの文化的価値の発見・発信を、それぞれの離島から行っていくことが、島旅の楽しみを多くの人に気づかせることになるといえよう。先に記した通り、日本には有人離島が400以上あり、少なくとも400回の「海外旅行」が楽しめるのである。

 また、島の文化の多くは、神事や芸能、食といった形で生活の中に構造化されており、島の日々の生活とは切り離せない。よって、島の文化的価値を見出す作業は観光振興に止まらず、自身の生活への誇りや地域への愛郷心を高めることにもつながってこよう。 

 筆者は今この記事を山口県の見島で書いている。見島は見島牛という、日本に二カ所しか残っていない日本在来牛の生息地(他の一つは鹿児島県の口之島)として有名であり、近年ではマグロの一本釣りでもその名前を知られている。しかし、見島のもつ文化的ポテンシャルは高く、もっと多くの魅力を見島は有している。

 例えば日本に三カ所しか無いとされる「正観音」を中心とした各種の信仰の場は、まさに今はやりのパワースポットであり、癒しや精神的な豊さを求める現代人に訴えかける、注目すべき観光資源となりうる可能性を秘めている。

 最後に今回の見島行との関連で、島旅推進における留意点を一つ述べておきたい。  

 筆者が訪れたのは、今月の3日から4日にかけて日本列島に被害をもたらした「爆弾低気圧」の通過直後であり、定期船が出るかどうか、未知数な部分があった。こうした状況を楽しめる旅慣れた旅行者ならば問題は無いが、一般的に、船が運航するか欠航するかは旅行者にとって大きな不安材料となる。

 島旅では、運行か欠航かのアナウンスや欠航時への対応、航空機や船の発着時間に合わせたチェックインやチェックアウトの時間設定、季節や船のドックインの際に変化する運行本数や発着時間の明示等、本土内での旅とは異なった旅行者への気配りが必要となってくる。

 旅行者が安心して島旅を楽しむためにはこうした情報が不可欠であり、予約システム等も含めた「観光情報プラットフォーム」構築の必要性が指摘されている。

著者プロフィール

土屋久

土屋久共立女子大学・順天堂大学非常勤講師

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