大学の知を活用し上信電鉄沿線の活性化に取り組む高崎商科大学 工女おもてなしプロジェクト
富岡製糸場東置繭所正面 画像提供:富岡市
地域の課題解決の観点から、観光振興やまちづくりに取り組む大学が増えている。その中の一つである群馬県高崎市の高崎商科大学では、2001年の開学から「地域に密着した大学」を目指し、地域づくりを専門に研究する教授の山崎紫生(やまざき・しお)さんを中心に、自治体、民間企業との連携事業や公開講座などに取り組んできた。今回は、乗客減に苦しんでいた上信電鉄に着目し、沿線活性化に取り組む活動について山崎さんに話を伺った。
山崎紫生さん
高崎駅-下仁田駅間を走る上信電鉄の沿線地域には、明治の日本の近代化を支えた富岡製糸場(富岡市)や百衣観音(高崎市)など、多数の観光資源が点在する。高崎商科大学ではそうした観光資源と上信電鉄を結びつける仕組みをつくれば、通勤・通学客だけでなく観光客にも電車を利用してもらえるかもしれないと考え、上信電鉄と連携。電車内で沿線の未来を考えるシンポジウムの開催や富岡製糸場についての知識を問う「工女検定」の実施、毎年12月に運行する「クリスマストレイン」で学生たちが車内の飾りつけやイベントを手がけるなど、上信電鉄沿線地域の活性化を進めてきた。
高崎商科大学では沿線活性化の取り組みを中心に、富岡製糸場の世界遺産登録運動や「富岡学」の学習などに力をいれてきた。そんなとき山崎さんは、文部科学省の平成25年度「地(知)の拠点整備事業(略称:大学COC事業)」を知る。沿線活性化の取り組みをステップアップさせる絶好の機会と考え、2013年に、高崎商科大学と上信電鉄沿線の高崎市、富岡市が連携し「地と知から(価)値を創出する地域密着型大学を目指して」を申請し、見事採択された。この事業では全国で52件が採択されたが、群馬県では高崎商科大学だけだった。
「これまでの地域活動の実績が高く評価されたのではないでしょうか」と山崎さんは採択された理由を語る。
大学COC事業は自治体と連携しながら全学的に地域を志向した教育・研究・地域貢献を進める大学を支援するというもので、大学は地域の課題解決に向けて、さまざまな人材、情報、技術が集まる地域コミュニティの中核的な存在となることが求められる。
上信電鉄沿線の「観光まちづくり」とそれを推進する「人づくり」を目指して、沿線活性化に向けたプロジェクトがスタートした。
高崎商科大学は、地域の要望と大学の知を効果的にマッチングさせるための体制づくりを強化しようと、新たな拠点として「コミュニティー・パートナー・シップ・センター(略称:CPC)」を設立し、センター長には山崎さんが就任した。富岡製糸場の近くと上信線山名駅前にそれぞれ学外拠点を開設し、地域との連携の窓口や学生・教員の調査研究の場として活用されている。
また、地域の声を受け止めるための「地域連携委員会」や、大学COC事業を評価する「事業評価委員会」を設け、機能面の充実を図った。さらに授業では地域課題を自ら発見、解決できるような「人づくり」を進めるため、グループワークやフィールドワークなどのアクティブラーニングの導入や、教員の観光まちづくりに関する調査・研究をサポートする「地域志向教育研究費制度」を導入し、教員の専門分野を活かして地域研究を行い、課題解決案を地域に提案できるような仕組みにした。そうすることで地域ニーズと課題をお互いに共有しながら、継続的に連携体制で活性化に取り組むことができるのだ。
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