大学の知を活用し上信電鉄沿線の活性化に取り組む高崎商科大学 工女おもてなしプロジェクト

2016.07.04群馬県

「工女おもてなしプロジェクト」始動

  大学COC事業の採択から2カ月後の2014年6月、うれしいニュースが飛び込んできた。富岡製糸場が絹産業遺産群とともに世界遺産に登録された。これを機に、富岡市を訪れる観光客は1日約2,000人から多い日で約9,000人になり、観光の状況が一気に変わった。その好機を活かそうと山崎ゼミの3年生と4年生の女子学生10名が中心となって立ち上げたのが「工女おもてなしプロジェクト」だ。

工女おもてなしプロジェクト立ち上げメンバー
工女おもてなしプロジェクト立ち上げメンバー

 工女おもてなしプロジェクトとは、同学の女子学生たちが富岡製糸場で働いていた工女の姿で、おもてなしをする活動である。上信電鉄の電車内や高崎駅、上州富岡駅にて観光客に富岡製糸場周辺の案内をしたり、富岡製糸場への行き方をわかりやすく紹介する「ルートマップ」を配ったりする活動で、6月21日から毎週末実施してきた。

 参加したメンバーは富岡製糸場や工女についての知識をあらかじめ持っており、上信電鉄とのイベントを企画した経験があったので、山崎教授は今回の企画、運営、上信電鉄とのやりとりなど任せて様子を見守った。

 メンバーはプロジェクト実施までに、着物の着付けを練習し、上信電鉄と何度も打ち合わせを行った。特に大変だったことは、誰をどこに配置させるのか、無理のないスケジュールを組むことだったという。
 駅で女性がコスプレをしてチラシを配っているだけと勘違いされないよう、プロジェクト当日は、のぼり旗や名札に大学名を入れ、声をかけるときは大学名を名乗るなど、大学生の活動だということを知ってもらう工夫をした。

 観光客からは、「富岡製糸場の見学の後、お勧めのスポットは?」「このあたりの名物が食べられるお店は?」などさまざまな質問が寄せられた。聞かれたことや答えられなかった内容は、メンバー全員で共有し、次の機会で対応できる態勢にした。
 答えられなかった質問は後から調べることで、今まで知らなかった地域の魅力を発見するきっかけとなった。こうした学内ではできない経験が地域への関心や愛着を育み、学生の成長を促した。

工女おもてなしプロジェクト立ち上げメンバー

工女おもてなしプロジェクト立ち上げメンバー

 当初は6月から1カ月だけ実施する予定だったが、観光客や地域住民、上信電鉄からも高く評価され、9月までプロジェクトを継続することになった。さらに2015年には富岡市と上信電鉄株式会社との産学官連携による「上州富岡駅観光案内おもてなし事業」へと発展していった。

 事業として発展した一方で、産学官連携での課題も見えてくる。

山崎
「学生たちはテストやクラブ活動などを抱え、学年によっては就職活動も重なるため、長期で活動する場合は、自治体や企業とのスケジュール調整が難しいですね。また、2015年の『上州富岡駅観光案内おもてなし事業』では、ボランティア活動ではなく、富岡市から学生に報奨金が支給されることになり、市や企業は対価として学生に労働だけを求め、学生からの提案はあまり受け入れてもらえませんでした。大学が自治体や企業と連携して活動するには、詳細な打ち合わせと相互理解があってこそうまくいくのではないでしょうか」

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