子どもたちを通じて見える「いいまち」の姿
大人と子どもが時間を共有する2つの「いいまち」
ミズガキ。水遊びをする子どもたちのこと。湧水のまちとして知られる静岡県三島市の観光課の方から聞きました。造語だそうです。
三島市には富士山からの湧水が流れる小川がたくさんあり、昔から子どもたちの格好の遊び場でした。私が訪れたのは連日37度近い猛暑の8月、川沿いの緑の下で水と戯れる子どもたち、いえ、ミズガキに、驚くとともに心和みました。
この光景は、市民と行政がそれぞれに得意分野に力を発揮し蘇えらせたものなのです。大人たちが守った環境の中で、無邪気に遊ぶ子どもたち、「いいまち」を見せていただきました。
昨年の夏、高知県赤岡のまちでも、同じような気持ちになりました。赤岡は、江戸時代の絵師金蔵が暮らしたまちで、絵金(絵師金蔵はこう呼ばれていました)を大切に、住民参加のまちづくりを進めてきたことで注目されています。
絵金の作品を収蔵、展示する絵金蔵は、赤岡町の商店主等有志約30名が参画する絵金蔵運営委員会によって運営されています。絵金蔵運営委員会は法人格のないNPOであるため、こういった団体が公共施設の指定管理者になるのは全国的にも稀なケースです。住民の取り組みに寄り添う赤岡町(当時)の粋な計らいといえるでしょう。
絵金が描いた芝居屏風絵は、江戸時代に好まれた世話物のスキャンダラスな場面が描かれていて、身の毛がよだつほどの実におどろおどろしいものです。
7月の絵金祭りでは、小さな商店街の軒下に並べられた絵金屏風絵が、ろうそくの薄明るい炎のもと、ぼやっと浮かび出されます。昼から始まり夜遅くまで続く絵金祭りでは、子どもたちが走り回っています。
夜になっても、鮮やかな血の色がろうそくの炎によって恐ろしさを際立たせる中、子どもたちは夜店で型抜き遊びに興じています。夏の夜遊びは、子どもたちの心を沸き立たせます。大勢の大人の中で、背伸び気分を味わう様子に、三島でのミズガキを思い出しました。
三島で水浴びする子どもたち、赤岡で夜遊びする子どもたち。どちらも、遠くで、近くで、見守る大人たちの目が温かでした。
どちらの子どもたちも、自分たちのまちのことをいつまでも大好きなはずだと確信し、世代をつなぐまちづくりは、大人と子どもが楽しい時間を共有することが大事なのだと、2つの「いいまち」まちから教わりました。
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