石見の歴史や文化に触れ、地域の人と交流する体験プログラム「いわみん」を開催 地域おこしに取り組むイワミノチカラ代表伊藤康丈さんに聞く

伊藤康丈イワミノチカラ代表

2018.04.19島根県

石見の歴史や文化に触れ、地域の人と交流する体験プログラム「いわみん」を開催 地域おこしに取り組むイワミノチカラ代表伊藤康丈さんに聞く
浜田市で開催したプログラム「弥栄の機織工場で 昔ながらの手織り体験!」。カラフルな糸と体験用ミニ機織り機を使ってオリジナルランチョンマットづくりに挑戦する

みんなが遊べる、楽しめるコンテンツを地域でつくる

 伊藤さんは石見版オンパクの実現に向け、プログラム実施者の掘り起こしを始めた。どこにどういう人がいて、どんな活動をしているのか、そういう情報をどうやって入手していたのだろうか。また地元の人の反応はどうだったのだろうか。

伊藤:僕がUターンしたころ、江津市では雇用創出の支援、人材育成などに取り組み、教育関係者や起業家、行政担当者などで組織するNPO法人てごねっと石見が設立されたんです。官民で中心市街地を盛り上げていこうと機運が高まっていました。そういうタイミングでしたので、県や市などからいろいろと紹介してもらえました。いきなり地元に帰ってきて地域おこしを始めたら、普通は敬遠されてしまいますが、ビジネスプランコンテストで入賞していたことが信頼につながり、皆さん好意的に受け入れてくれました。

 伊藤さんは、新規に開業した店、団体、老舗事業者などを訪問し、さまざまな人と話をしていった。
 石見版オンパクはふるさと江津市だけではなく、隣り合う市町との交流を促すことで、石見地域がもっと面白く感じてもらえるのではと、複数市町での展開を考えるようになった。また、伊藤さんが江津市で暮らしてみると、隣町の情報をなかなか入手できないことが、そう考えるようになった要因の一つでもある。
 そして、川本に開業したばかりのカフェを訪問し、オーナーと話していくうちに、石見版オンパクが実現へと進んでいく。

伊藤:江津や川本の人は、遊べるところが近くにないからと広島などへ出かけてしまうんです。でもそれぞれの地域には素敵なお店や代々受け継がれている独特の文化、風景などがありますよね。例えば川本の人が江津へ、あるいは江津の人が川本へ行き、その魅力を活かしたプログラムがあれば、それぞれ楽しんでくれる人が増えて、「地域には何もない」と思わなくなると思ったんです。

 オーナーはオンパクに協力したいと、カフェの活用を提案してくれた。そこから川本町でも話をしていくようになり、フェルト作家やお寺、エゴマやヤーコン、米を栽培する農家などがプログラム実施者に加わった。
 また浜田市弥栄町にある織物工場を訪問する。かつては京都・西陣の帯を手織りで織っていたが本社工場の閉鎖により、自主再建に取り組んでいることを、行政の担当者を通じて伊藤さんは知った。

伊藤:地域を巡っていると、何かしたいが、どうしたらいいのかわからないと考えている人も多く、オンパクをチャレンジの場にしてもらえたらと、工場のオーナーをプログラム実施者に誘いました。工場には機織り機と絹糸があり、西陣織の技術を持つ素晴らしい職人がいました。そのままにしておくのはもったいないと感じ、ここで手織り体験ができれば、新しい顧客と出会えるかもしれないと思ったんです。

 こうして、浜田市、江津市、川本町から、まち歩きや石見神楽の練習体験、農業体験、地酒の飲み比べ、手織り体験、カフェでクラフト体験など29のプログラムが集まり、2013年5月に第1回目の体験交流イベント「いわみん」を開催した。いわみんの名称には「いわみの国をみんなで遊び、みんなで笑うことができたら、自分たちの暮らしている地域が楽しい場所であること、面白い人がたくさんいることを知ってくれたら」という思いを込めた。

伊藤:約3週間の開催でしたが、参加者からは「地元にこんな楽しいところがある」「面白い人たちが暮らしている」といった声をいただきました。また、プログラム実施者に挑戦したいという声も寄せられました。

 いわみんは年2回のペースで開催していった。2015年にはしまね田舎ツーリズムの体験キャンペーンを委託され、いわみんで培ったノウハウとネットワークを活かし、2カ月間で2,000名以上の参加者を記録した。開催エリアも広がっていき、9回目となる2017年秋には大田市、江津市、浜田市、益田市、美郷町、川本町、邑南町から82のプログラムが集まった。親子で楽しめる模型製作や、ボルダリング体験、萩・石見空港見学ツアー、室内雪合戦などのほか、惜しまれながらも廃線が決定したJR三江線沿線での写真撮影会、西アフリカのセネガル料理教室、北前船の寄港地だった外ノ浦の散策など、幅広い世代が楽しめるプログラムが展開された。

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