観光と語り部 遠野市を事例に
広がる市民の語り部
プロジェクトと認定までの流れ
遠野「語り部」1000人プロジェクト―語りでにぎわう、まちづくり―(注2)は内閣官房・内閣府の「平成21年度地方の元気再生事業」に採択され、1,450万の助成金を受けた。当プロジェクトは、従来の「昔話」の語り部に加え、「歴史」「食」「郷土芸能」「生業」の語り部を育成・認定し、地域活性化につなげることを目的としている。2014年7月現在、認定者数は629名。うち小学生が246名で、大人の大半は60歳以上である。応募から認定までは、①応募申請、②スクーリング(認定委員による講義および集団面接)、③認定委員会の「語り部」認定協議、④認定式、という流れになっている。
具体的には、まず希望するジャンルについて自分が語れる内容を文章にまとめ、遠野文化研究センターへ提出する。スクーリングではジャンル別認定委員3名の前で語りを披露し質問に答える。「昔話」は大人が3話、子どもは1話を要求され、認められれば認定証を受ける。大人はほぼ全員合格する。小学生が不合格の場合、数日おいて再度チャンスが与えられる。小学生のスクーリングでは認定委員が学校へ出向く。
なお、認定後のスキルアップ研修では、語りを披露し認定委員から助言を得る。養成の一環として地元ケーブルテレビが「語り部」放送大学を配信し、番組では各ジャンルの語り部がインタビューに答え、語りを披露している。テキスト教材として番組を文字化したものがある。
観光と「語り部1000人プロジェクト」
「語り部1000人プロジェクト」認定者(ここでは観光業に携わる認定者を含まない)には、「語り部スポット」、祭りや行事の会場、商売を生業とする人々の仕事場などで会うことができる。
現在、「語り部スポット」はJR遠野駅から正面に伸びる「民話通り」に2カ所あり、のぼりが目印となる。一つは「マヨイガの郷」(月曜定休)、もう一つは「にぎやかギャラリー」(水曜定休)である。
語り部スポット「マヨイガの郷」
「マヨイガの郷」の語り部、井手さん(左)八木さん(中央)
前者はエコクラフト販売店兼教室で、メンバー12名のうち「語り手」認定者は5名。代表の八木美嬉は歴史の語り部として認定を受けている。
語り部スポット「にぎやかギャラリー」
「にぎやかギャラリー」の語り部、(左から)上野さん、海老さん、小笠原さん
後者の「にぎやかギャラリー」は遠野町地域婦人団体協議会が運営し、約170名の会員が行政区毎に輪番制で常駐している。会員は「食」の認定者が多い。会長の海老糸子(遠野市地域婦人団体協議会会長兼任)によれば、主な活動として節分祭り・遠野昔ばなし祭り・遠野町家ひなまつり・遠野さくらまつりなどでのもてなし、商品開発、行政などの要請に応じた炊き出し協力や町と町との交流などがある。2012年遠野食の祭典「粉んなもんグランプリ」では、同協議会開発商品「行者ひっつみ」が1位となった。
(注2)実施主体は、申請時は遠野市中心市街地活性化協議会、現在は遠野文化研究センター。
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