現代の「宿」、ゲストハウスの魅力とは

石川美澄共栄大学国際経営学部国際経営学科観光ビジネスコース講師

2015.03.02

旅行者にも住民にも魅力ある場所

 筆者の調査によれば、ゲストハウスが台頭しはじめたのは2000年前後、全国的な広がりをみせたのは2000年代半ば以降である。つまり、国内のゲストハウスに対する認知度や興味関心が高まったのは、ここ数年のことだと言えよう。ところで、この社会動向の一端を支えているのは、現代の人々にとってのゲストハウスの魅力や価値の存在である。ゲストハウスの魅力の全てをここに示すことはできないため、訪日外国人個人旅行者と住民・通勤通学者という2つの視点から考えてみることとしたい。

 まず、訪日外国人個人旅行者にとってのゲストハウスの魅力の1つは、宿泊料金の安さである。ただし、昨今の宿泊特化型のビジネスホテルチェーンの価格や無料朝食サービスなどを踏まえると、彼らはゲストハウスを価格だけで選んでいるのではないとも考えられる。Hostelworld.comのようなオンライン予約システムから予約可能というアクセス性の高さ、今でこそ「当たり前」となったがWi-Fi完備・英語によるコミュニケーションが図れる等の利便性の高さ、ゲストハウスのスタッフのフレンドリーさも彼らにとっては魅力的であろう。

Hostelworld.com トップページ
世界中のホステルが予約できるオンライン予約システム「Hostelworld.com」

 次に、住民や通勤通学者にとっては、ゲストハウスの宿泊機能よりもその他の機能が魅力となっていると考えられる。前述したとおり、カフェやバー、イベント開催などがあるため、日常的にさまざまな人々が行き交う場所として魅力的なのではないだろうか。

 筆者は、ゲストハウスを日常生活における居心地のよい場所、すなわち「サードプレイス」として位置づけていたり、そこで催されるイベントに参加し、その場にいる旅行者や住民などとのコミュニケーションを楽しみにしていたりする者としばしば出会う。こうした人々から話を聞かせてもらうたびに、宿は一時的で偶発的な出会いを誘発する文化装置であり、旅行者でない人々にとっても価値あるものだという思いを強くする。

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