長良川おんぱくで流域再生 第1回 おんぱくは一日にして成らず
地域に眠る物語と向き合う
長良川おんぱくプロデューサーの蒲勇介さん
仕掛けたのは長良川おんぱく初代事務局長、現在はプロデューサーの蒲勇介さんだ。福岡市で大学に通いながら、ベンチャー企業でデザイナーとして広告やウェブの仕事をしていたが、2002年に岐阜に戻ってきた。23歳のころだ。
蒲:帰ってきて思ったのは、まちの人たちが、あまりに自分のまちに誇りがないということです。岐阜には金華山や長良川鵜飼といった素晴らしいものがあるのに『なにもない』と言う若い人がとても多かった。そこで、地域に眠る魅力を発掘してプロデュースしようと考えました。
最初に取り組んだプロジェクトの一つが「水うちわ」の復活。材料を作る職人がいなくなり途絶えていた岐阜の伝統工芸、水うちわを職人らとともに復活させた。
蒲:上流から運ばれた材木や和紙などの荷を揚げる、問屋町としての岐阜町の成り立ちがだんだんわかってきました。
2007年7月、蒲さんは古くからの雰囲気を残す岐阜町の町家に移り住み、任意団体ORGAN(後にNPO法人化)を立ち上げた。このころ取り組んだことが後の長良川おんぱくにつながっていく。例えば2009年に開いた「第7回日本山村会議」。長良川上流の美並村粥川地区(現郡上市)が舞台の映画『粥川風土記』に出てくる地元の方を訪ね、筏づくり、栃餅づくり、行場(ぎょうば:修験道の修行の場)巡りなどを体験する2泊3日のプログラムを設けた。事務局はORGANのメンバーほか若い世代と美並村の「おじいちゃんおばあちゃん」たち、合わせて約30人が務め、全国から約100名が集まった。
蒲:農村の方とのコミュニケーション手法や話法があることがわかったし、地域資源や地域に眠っている物語を活用した体験プログラムづくりとしても勉強になりました。ファシリテーション技術や資金調達なども学びました。
ほかにもORGANでは町家保存やお年寄りのたまり場づくりなどに取り組んだ。そして2010年、活動に注目した岐阜市教育委員会中央青少年会館から、青年向け講座の講師依頼を受けた。
蒲:せっかくなら地域の物語を体験する連続講座をやりませんかと逆提案したんです。
こうして実現したのが「古今金華町人ゼミ」。町家めぐり、座禅、お座敷遊びなどを体験するもので、申し込みが定員を大幅に超えるなど反響を呼んだ。内容は後の長良川おんぱくのプログラムにつながるものばかりだ。蒲さんはこのときすでにオンパクを意識していたという。
古今金華町人ゼミ まちあるき
古今金華町人ゼミ 和菓子店を訪問
スポンサードリンク