これから求められる観光まちづくりの視点

米田誠司愛媛大学法文学部講師

2012.09.16

地域内再投資とは

 観光まちづくりには多くの実践事例があり、いずれも現在進行形で動いている。そこに求められる視点も数多く挙げられようが、字数の限りもあり、縁遠いが大切な視点と、身近だが見落としがちな視点を提示したい。それは「地域内再投資」と「日常食」である。

 地域内再投資とは何か。京都大学の岡田知弘教授によれば、地域内の再生産の維持・拡大のために、地域でまとまった投資がされ続けることとされている。

 例えば観光まちづくりでは、地域に観光客を誘致するための活動を行ったり、住む人にも訪れる人にも魅力的な地域であり続けるために景観を整えることなどに再投資が必要である。
 企業であれば、利益を伴った売上げの中から再投資して事業が継続され、自治体であれば、地域の経済活動がさまざまに税収に反映して自治体運営に資する。

 ただ地域における観光まちづくりでは再投資財源の確保は容易ではない。例えば、全国の温泉地で入湯税が課されているものの多くは一般財源化され、本来の鉱泉源の保護や観光振興にはなかなか再投資されにくい。

 交流や出会いを軸に地域をより良きものにしていこうという観光まちづくりにおいては、税やその他の方法で地域の経済活動から一定額が還流し再投資される仕組みがこれから必要である。同時に、観光まちづくりの成果として地域内に入った財を、できるだけ地場流通などにより経済循環させるということも地域内再投資には不可欠である。

地域における食

 次に地域における食について、特に日常食について考えてみたい。

 今日まで観光の中での食については、豪華さを競う旅館料理や、観光地価格などと揶揄される過剰なメニューなどはなかっただろうか。もちろん観光客の非日常を味わいたいという欲求はもっともなことであり、ごちそうも大事な文化である。

 けれどもそうしたハレの食というものは、日頃の豊かな食生活を背景として初めてその真価が発揮される。いくらいい食材を使っても、おいしい出汁をひいても、日頃コンビニで食事を済ませたり、冷凍食品に慣らされ化学調味料に浸ったような食生活では、その本来の価値の何分の一も味わうことができない。

 そうしたことを踏まえて、日常食とごちそうの両方について観光まちづくりの一つとして深く考えてみたい。

 さらに、地域により長く滞在できる仕組みを考えていかなければならないが、残念ながらごちそうは毎日食べ続けることはできない。とすれば、地域らしさや季節感にあふれた味わい深い日常食というものをどう提供できるか、ここが正念場である。

 異質に見える二つの視点であるが、地域の食材や食文化から発想すれば、その根っこはしっかりとつながっている。

著者プロフィール

米田誠司

米田誠司愛媛大学法文学部講師

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